曖昧であること|2025.02 Turkey
2025年2月
トルコを旅した
帰国して尋ねられると
「気球はやっぱり良かった」
と答えている
緩やかに上昇する
ゴンドラと共に
地平線の奥を覗きながら
空と同じ目線に届く
そして
繰り返されるセルフィーに
向かい合ったカップルと
苦笑いしながら
ゆったりとした
1時間弱のフライト
気温は-15℃だった
悴んだ手で
カメラを構えた
*
そしてもう一つ
ビックマック単品は1100円だったけれど
隣のピザ屋は250円でセットが食べられた
というエピソード
おまけに
スーパーの2Lの水は30円だし
ローカルのパンも一つ30円だった
だけどレストランのケバブは3000円だった
ちなみに宿は
2000円〜5000円程度だった
気球フライトは
オフシーズンで9000円
夏場は30000円程度らしい
そんな
物価がグチャグチャに感じたこと
しかしこれはうまく届かない
*
僕が旅したその日々は
言葉にしても写真を通しても
分かりやすい何かになって
そして
旅をした理由や
何に心奪われたかを
伝え始める
分かりやすく
伝えることで
喜んでくれるし
それは正しくて
きっとその通りで
だけど
もっと曖昧な感情と
よくわからないままにしたいと
常々思ってしまう僕は
中々に、生きづらい
*
トルコで最初に訪れた都市は
Antalya
地中海沿いの温暖な街だった
パリでお仕事を終えた僕が
首都のAnkaraを目指す中
隣のおじさんからお勧めされて
経由空港で途中下車した
よくわからない
寄り道
この出口と
たくさんの客引き
街までの移動手段すら
分からない
もちろん英語も
伝わらない
心が萎む
もう21時近かった事もある
電車のホームも見当たらない
近くの人たちに
「相乗りで街まで一緒に行けないか?」
と尋ねてみる
2組目の人が
周りの人にも聞いてくれた
バスが来ることが分かったので
一緒に待った
その間に宿を取ろうとしたら
Wifi環境ではなぜか
「国内からは宿泊予約ができません」
の文字
また心が萎む
Wifiを切ってみると
予約ができることが分かった
安心して 10分ほど待って
バスに乗り込む
到着すると
そこは都会の様相だった
萎み続ける心
疲れが溜まると淀む
歩いて宿に向かうと
幸い
相部屋には誰も居なかった
安宿は四人一部屋
シャワーとトイレは
フロアに2つずつ
*
翌日
街を歩くと
印象が変わった
あちらこちら
猫がよくいた
美人さんが
ご飯を食べている横で
こっちを見てくる
なんなら
隣に座ってくる
猫好きにおすすめの国
堂々の第1位
*
そして
街を10分も歩くと
地中海に出る
気温は20℃
凪を眺める
*
何をしたくて
トルコに来たわけでもない
シルクロードの交易点
アジアとヨーロッパの境
たくさんの気球
漫画の中で見た
アンカラの平原
その全てが
トルコに誘ってきた
けれど結局は
ふらふらと街を
歩くだけの日々
平均して1日に2万歩
ぼーっと
歩き続ける
本当に
ただそれだけ
その中で人と話し
感じたことを
味わう
幸せだった
Ankaraで出会った
ブルーモスク
教会とは違う宇宙
隠れ里の名を持つ街
ギョレメ
カッパドキアの中心
そこかしこで
溶けている犬
それぞれの街
*
海外を歩くと
特別な何かに
なれたような
気持ちになる
何も変わらないのに
場所だけが違う
異物感
知らないことが
楽しい
*
ただ
歩き回る
佇む
話す
留まる
繰り返し
味わう
よく分からない
心地よさ
そんな
旅