誕生日には恐れていることを
4月22日。
一年で一番緊張する日。
今年は島根にいました。
一年ぶりに綴っています。
***
ここ数年の間
沢山の出来事がありました。
僕は29歳で会社員を辞めたあと
自分の中の価値観が崩れました。
半年間で。とんでもない早さで。
そして
どうしようもなくなった僕は
沢山の人に助けてもらいました。
そして
一つのルールを作りました。
「誕生日、恐れていることをする」
始まったのは2017年4月22日。
北海道最北端へヒッチハイク旅。
(宗谷岬)
そして継続した2018年4月22日。
憧れがあったヨーロッパ放浪旅。
気づけば三ヶ月ほど各地を放浪。
(サハラ砂漠)
旅というものの心地よさと、
いろんな不安を満喫しました。
知らない土地で初めて出会う
異なる感覚や文化や言語の壁。
面白かった。
だから今年も考えました。
「今年はどこに旅に行くの?」
友人も聞いてくれました。
インド、ブラジル、世界一周。
いろんなイメージが膨らんで、
その度に違和感を感じて萎む。
そこでやっと気づいたことは
旅はもう怖くなくなったこと。
それじゃあ、
一番恐れていることはなにか。
この問いの答えを
僕はずっと気付いていました。
音楽活動を一緒に志した
元相方とまた話すことでした。
***
3年以上前。
大学で知り合った僕らは会社員になり、
島根と鹿児島で離れて音楽をしました。
年に数回音楽を共に演奏するなかで、
僕らの気持ちは高まっていきました。
結果
相方は仕事を辞めて島根に来てくれて、
家を借りてシェアハウスを始めました。
その熱意に触発された僕も葛藤の末に、
仕事を辞めて音楽活動に専念しました。
相方と毎週のようにどこかで演奏しました。
僕たちなら何か形が残せるはずだと信じて。
それなのに
僕は気が付いたら、
いろんなことが嫌になっていって
相方のことも付き合っていた彼女も
お世話になっていた人も音楽活動も
自分の世界全部が苦しくなりました。
理由もわからずただ苦しい毎日に
逃げるように人との距離をとって
同居していた相方と顔も合わせず
予定していた演奏活動も欠席。
2人で話しても僕は理由がわからず、
一方的に「一人にしてほしい」と
シェアハウスを離れました。
そこから気づけば2年以上。
僕は相方に会えずにいました。
**
誕生日当日。
広島から島根の相方に
メッセージを送りました。
「今夜、夕食一緒にどう?」
一文を送るのも、怖かった。
そしたらお昼には
「おう、喜んで!」
と、何のことはない返信。
相方は相方のままでした。
居酒屋個室を予約して、
予定15分前に席につき
どんな顔でどんな言葉で
話すのか不安になりつつ
待っていました。
*
居酒屋に入ってきた相方は
呆気ないほど普通に笑って、
そこからは何のこともなく、
お互いの心情を伝えました。
余りにも当たり前のように
彼は僕の話に耳を傾けてくれました。
ずっと抱えていた濁った感情を
相方は責めず許してくれました。
僕は僕が嫌いだったこと。
自分を全然認められなかったこと。
それを写す対象が相方だったこと。
一度すべてを認めて諦めたこと。
僕の中の結論として
音楽は、まだ交わらないけれど
お互いがお互いに見ている道を
しっかり歩こうと思っていること。
二人笑いながら話せました。
*
4月22日。32歳
苦しみ続けた思考の淀みが
やっと滑らかになりました。
僕は音楽がやっぱり好きなので、
演奏活動と創作活動は続きます。
いろんなことを糧に変えながら、
またいつか聴いてもらえるよう。
**
音楽を続けると決めた僕は
翌日大切な場所に行きました。
島根県益田駅前のMarufuku。
2年ぶりにマスターと飲んで
顔馴染みの常連さんたちに
粗削りな音楽を聴いてもらいました。
怖さと心地よさが両方あって、
久しぶりに自由な音楽でした。
マスター。いつもありがとう。
***
自分が如何に自分を知らないか
精一杯知ることになった2年間。
書いてしまえば美談にも見える、
僕の中にあった真っ黒な経験。
やっと、清算できました。
ここからまた頑張ろうと思います。
良い音が届けられますように。
それでは、また。